2016年5月16日月曜日

パレス・メイヂ 5巻 其ノ十七 感想

貝合わせの回。

松葉の典侍様にかたつむりをあげる幼女陛下が、可愛いのなんの。
池の鯉も松葉の典侍に「やる!」ってあげてるけど
一巻で東辻さんと久我さんも、鯉を釣った事も
あったなあ〜って言ってたしパレスの鯉、難儀すぎる(笑)。
お高いんでしょうに。

パレス・メイヂの登場人物って、時代や身分的にも女性
(陛下・真珠・御園姉とか)は特に自分の生き方を選べない
境遇の人ばかりなので、もちろん恋が上手くいかないとか
ままならない事はあれども、好きな人と結婚できないなら
と自分の意志で女官の道を選んで、その中で陛下を
お守りするっていう喜びも、自分でちゃんと見つけている
松葉の典侍は幸せだし、登場人物の中で一番
現代人に近い価値観の女性なのかも?と思う。
松葉の典侍も、柏木翁も大膳の梅山さんも、今までフォーカスが
当たった臣下の人達は、皆それぞれの立場から十分に
陛下の事を思ってるんだけど、震災の回を見ると
それでもやっぱり、陛下は孤独なんだよな〜と思って
ちょっと一抹の寂しさを感じたりもする。

御園は、アスター夫人の世知を理解する賢さがありつつも
少年らしい素直さが、同居してる所が良いなあ。
スレちゃいそうなものだけど、スレてないし。

あと最後のアスター夫人と陛下のやりとり。
陛下が誰かに御園への感情を問われるのは、アスター夫人で三回目。
一回目は松葉の典侍で、一巻で「御園の事をどうお思いなのでしょうか?」
と聞かれて臆面も無く肯定する。ノリノリで、聞かれてないのに
理由まで添えて(笑)。二回目は三巻の時の真珠で
「恋をしているようなおっしゃりよう」と言われて
「良くわからぬ」と否定も肯定もしない。
そして、三回目のアスター夫人には、愛しているのかと
(間接的に)問われて、「少し違うな」と否定している。
恋愛として意識していなかった最初の頃は、あっさり肯定していたのに
気持ちが育っていくにつれ、最後には否定するようになる。
陛下の気持ちの変化が良くわかる。
この時点で、もうほとんど認める寸前だったんだろうな〜。

2016年5月12日木曜日

別花2016年4月号 パレス・メイヂその二十一感想2

21話の感想は以前にも書いてるんだけど、
http://fennel88.blogspot.jp/2016/03/20164.html
読みかえしてたらまた書きたくなってしまいました…。
6巻の1話目に収録予定の回です。
今回はあらすじをがっつり書いてます。ネタバレにご注意下さい。














今回は三巻収録の其の九(真珠の回)と連なる、涙が鍵になる話。

彰子様に別れを告げられて、失意のまま京都に避難している
兄の元に向かおうとした御園は、偶然同じ汽車に乗り合わせた
真珠と再会し明慈帝崩御と、彰子様即位までの昔語りを聞く事になる。
臣下達が、病床の明慈帝の回復を願う一方で大喪(帝の葬式)の準備を
進めている事を知り、ショックを受ける彰子様。
そして当時の彰子様の寂しさを想う御園。重臣達が病床の明慈帝に
践阼の勅許をもらう役目を押し付け合っている事を知り、辛い気持ちをこらえて
自分がその役目を引き受ける彰子様。
自分の死期を悟り、彰子様が帝の重責を背負わなくてはならない事に
気づいていた明慈帝は、彰子様のその強さが心配だと語り
「泣いても良い、今なら涙を拭ってやれる」と声をかけるが、病床の父への思いやりから
彰子様は泣かずに父を励ます。そしてついに明慈帝は崩御してしまうが、
その時にも感情を表に出さず、軍服を着込み践阼式に臨む。
彰子様はこんなに強い方で、帝としての責務をなによりも大切にしている。
だから彰子様の事は諦めなさい、という真珠の弁。
しかしその言葉に違和感を感じ「じゃあ何故そんな強い方が、私なんかで
悩み苦しまれると心配したんですか?」と返す御園。
御園の問いに、言葉を詰まらせる真珠。
彰子様は何故、自分との別れの時に涙を見せたのか。
どれだけの悲しみ故のものだったのか。明慈帝の前ですら泣けない、
彰子様の涙を拭えるのは誰なのか。それに気づいて涙をこぼす御園。
今までも作中で、涙は成長のモチーフとしてしばしば登場してきた。
真珠が、明慈帝の涙を拭った時。彰子様が、内親王時代に真珠が
泣いていた理由を理解した時と御園の前で涙を流して別れを告げた時。
それぞれ涙を流して(拭って)、過去の自分と決別してる。
御園の涙も少年時代との決別であり、汽車を途中で降りて帝都に戻る事を決意する。


以上が(勝手な見解を加えた)流れ。彰子様の強さと弱さと御園への想いが
伝わってくる素晴らしい回だった~。まさかの真珠登場にびっくりした。
出てくるなら彰子様側だとばかり思ってたので。
二人とも公家華族だから、京都にルーツがあるんだろうな…多分。
20話のお別れのシーンって、単独で見ても凄く良いんだけど
この回を読むと意味が上乗せされて、より感動的になる。
当たり前だけど御園は読者程には、彰子様の御園への想いを知らなかったんだよなあ、と。
彰子様が軍服を着るシーン、無表情で凄く痛々しい。
帝になる前の彰子様って、今の東宮様みたいに天真爛漫なんだけど
帝になってから、感情を表に出さないようにしてたんだな~っていうのがよくわかる。
御園の前だと表情を出すように段々なっていくんだよね。
「寂しかったのはあなたもでございましょう 陛下」のコマが好き。
汽車の動きや音が効果的に差し込まれてて、凄く映像的だった。
アニメにしたら凄く良いと思う…!
何回でも言う、パレス・メイヂアニメ化して白泉社さん…!円盤買うから…!

概ねいつも彰子様の事を陛下って書いてるんだけど、
今回は明慈帝が出てくるので彰子様としました。終わり。

2016年5月10日火曜日

パレス・メイヂ2巻 其ノ六感想

修学院行幸の回。
週3日も働いてるのに、中の中の成績をキープしている御園はむしろ偉い…。
でも黒田君には、進級が割と本気で危ういって言われてるから
中の中は陛下の前だし、多少盛ってる発言なのかもしれない。
中の中の成績の人は進級危うくならないよね普通…。
普段は若い身でありながら、身分と役割を十分に弁えてる二人が
お互いへの想いが揺らめく時に垣間見せる、少年少女らしさが鮮やか。
無意識に「御園!」と目を輝かせて応援してしまう陛下が可愛らしいし
その声に応えて「負け姿を見せたくない」と矜持を見せる、御園が凛々しい。
御園のかっこよさを「選抜学生に選ばれるようなハイスペック」としないで
こういうエピソードで見せてくれる所が、この漫画の魅力だな〜と思う。
帰り道で陛下が「今日は色々見ることができて良かった」って言ってる時の
コマの地面に倒れこんでる御園が、陛下に笑いかけてるんだけど
これは描かれてないけど、陛下が笑ってたからこその
笑顔なのかな〜と思う。めっちゃ青春。
「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」の世界だわ…。

パレス・メイヂ2巻 其ノ五感想

歌御会始の回。この回は特にお話の完成度が高くて、とても好き。
陛下の恋心(未満の淡い想い)を詠んだ歌は、より帝らしくという指導により
歌人・柳原詩子に改編されてしまう。けれど東辻が順番を間違えたおかげで、
ほとんど柳原作に成り果てていた陛下の歌は、柳原の作として詠まれ
陛下の本来の歌はその想いの相手である、御園がよむ事となる。
奇しくも理想的な形でよまれた歌だけれども、肝心の御園には
歌に込められた陛下の想いは伝わらず、ただ一人、同じく御園に
想いを寄せるお律だけが、歌から陛下の想いを読み取る。
両想いなんだけど、微妙にすれ違っている二人の恋心を表現した、素敵な話。
御園が御製をよむ場面は描かず、最後の最後にお律が歌を読む所でやっと
陛下の歌の内容が明かされる…という構成がニクい。
トラブルメーカーの東辻さんと東宮様も可愛い。
読むたびにアニメで見てみたいなぁと思う。